
Walkabout #12 心を開くということ—ある子どもたちとの出会い(浅野佳代)
旅とヴィパッサナー瞑想の実践を通じて学んできたブッダの教え、自然の教えをテーマにしたエッセイです。 ・ ある子どもたちとの出会い 最近、とあることがきっかけで、「先生」と呼ばれる仕事に携わることとなった。まったく意図していなかっただけに不思議なのだが、自然な流れでそうなった。これまでに何かを教えた経験はないから、自分でそうしようと思っていたら、おそらく躊躇していたことだろう。 私のことを「先生」と呼ぶのは、学習支援が必要な発達に障がいをもつ小学生や中学生の子どもたちだ。彼らは学校が終わってまっすぐに教室にやってくる。彼らからすると、そこにいる大人はみんな「先生」になるらしい。せいぜい「新しい先生」「いつもいる先生」の違いがあるくらいで、初対面であっても気兼ねなく話しかけてきてくれる。 経験のない、初めてばかりの環境で、どうしていいのかわからず戸惑う私に、声をかけてくれるのはいつだって子どもたちのほうだ。「ねぇねぇ、アンパンマンのこのキャラクター、知ってる?」「昨日はディズニーシーに行って来たの」「ぼく、卓球がやりたいな」。こちらから質問をしなくて