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  • 執筆者の写真Saudade Books

詩のリレー連載 食べることは歌うこと #1(どいちなつ)

更新日:2019年10月19日



「食」にかかわるさまざまな仕事をする人に、「食べること」をテーマに詩やエッセイを寄せてもらいます。





焚火をかこんで 話すこと


日が落ちて

そろそろ月も出るころ

人があつまる

始まるのはお話の時間

こわい話やわらい話、それからむかしの話に

これからの話も


薪を積んで、火をおこす

炎があがり、あたたかくなる

パチパチ炭のはぜる音

モクモク煙があがってゆく


それじゃ、ごはんができるまで

焚火をかこんで話そうか



焚火のあとの ごはんのこと


月が空をわたるころ

夜がやってくる

ながい話がおわったら

みんなおなかが空いたころ


ぐつぐつお芋が煮えている

ことことお豆がゆだってる

お米の炊ける匂いがしたら


ごはんかこんで、いただきます。



付記


たくさんの嬉しさに喜び、それから悲しみに辛いことも、私たちは色々な経験をして毎日を生きています。経験から沸き起こる体いっぱいの感情を、私は毎日のごはんの時間に食卓を囲む人と、分かち合います。ときには大切な人と、夜の静けさの中で焚き火を囲みながら、分かち合います。


言葉にしなくてもいいと思うのです。でも、詩をつぶやくように言葉にしてみると、言葉よりもっともっと深い分かち合いが、その場には生まれると思うのです。



プロフィール


どい・ちなつ 料理家。兵庫県・淡路島在住。“こころとからだにやさしい” をテーマにワークショップや料理教室「季節の台所」を主宰。野山の植物、自然農を学び、野菜やハーブを栽培。「心に風」としても活動。著書に『焚火かこんで、ごはんかこんで』(サウダージ・ブックス)他。



編集部註


2篇の詩作品は、どいちなつさんの著書『焚火かこんで、ごはんかこんで』(サウダージ・ブックス、2013年)より転載しました。



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